肩関節周囲炎(いわゆる五十肩)

 

【病態】

 

病因は依然として不明ではあるが、加齢による肩関節周囲の軟部組織(腱板、上腕二頭筋長頭腱など)の退行変性を基盤として、肩峰下滑液包や三角筋下滑液包、関節包などに炎症性病変を生じる疾患の総称である。

 

炎症消退後に起こる組織の癒着等により、肩関節の可動域制限を生じる。

 

 

 

【症状、所見】

 

40歳~60歳代に多く、徐々に発症し、疼痛とROM制限をきたす。

 

疼痛は寒冷時、夜間時に強く、上腕や肘に放散する。

 

ROM制限は、あらゆる方向にみられるが、内旋制限により結帯動作が、外旋制限により結髪動作がそれぞれ困難になる。

 

臨床的には、炎症・疼痛が強い急性期と関節の拘縮が始まる慢性期に分けられる。

 

 

 

【理学検査】

 

ヤーガソンテスト:上腕二頭筋長頭腱炎で陽性

 

ストレッチテスト:〃

 

スピードテスト:〃

 

ダウバーン徴候:肩峰下滑液包炎、三角筋下滑液包炎で陽性

 

ドロップアームテスト:棘上筋腱損傷で陽性

 

関節可動域測定:屈曲、伸展、外転、内転、外旋、内旋などの角度を角時計を用い測定する。

 

 

 

【治療方針】

 

急性期:障害組織の消炎と鎮痛を図る。

 

 

慢性期:障害組織の消炎鎮痛を図ると共に、関節拘縮を除去し、可動域の拡大を図る。

 

 

 

【施術例】

 

急性期

 

①肩関節部に掌圧を行う。

 

②頭部、肩甲上部、肩甲間部、三角筋胸溝、肩甲骨内側縁(以上すべて患側)に重点を置いた全身指圧を行う。

 

*全身指圧を行う際に、患側肩部に痛みを誘発させない肢位を選択し、施術を行う。特に患側を下にした横臥位は行わないこと。

 

 

 

慢性期

 

①仰臥位にて、患側可動域内で、大円筋、肩甲下筋等を指標に、腋窩部を施術する。

 

②仰臥位にて、三角筋胸溝部を施術する。

 

③仰臥位にて、三角筋前部、三角筋中部を施術する。

 

④伏臥位にて、あるいは患側側の横臥位にて、ローテータカフを構成する諸筋や三角筋(後部線維)、上腕二頭筋、上腕三頭筋などにみられる硬結に施術する。

 

⑤全身指圧を行う。

 

⑥仰臥位にて、片手で患者の手首を持ち、肩関節を他動的に動かし、引っ掛かりのみられる角度で静止させ、肩関節の深部にある硬結に施術する。